表面利回り10%くらいの中古物件をフルローンで買う。
いま最もポピュラーな不動産投資の手法の一つですね。
では何を根拠にこの投資が儲かると言えるのでしょうか。
仲介業者さんが出してきた収支表。
「各種費用を見込んで、返済を考慮しても、手元にこれだけ残ります。」
「すばらしい!ぜひ買います!」
あとは銀行に融資を持ち込んで、承認が出れば物件購入。
こんなところでしょうか。
はっきり言って、この手の不動産投資は、収支を正確に分析して判断しなければ、失敗します。
仲介業者さんが出してきた収支表には、本当に必要な費用が全部見込まれていますか?
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ひとつ例を出しましょう。
これは私が実際に過去に検討した案件を基にしたケーススタディです。
以下のような条件の物件。あなたなら買いますか?
- 所在:某地方中核都市郊外
- 築年数:25年
- 構造:RC(鉄筋コンクリート)
- 間取り:2LDK
- 戸数:30戸
- 各戸面積:15坪(約50平米)
- 家賃:5万円/戸
- 稼働率:90%
- 価格:1億8,000万円
- 表面利回り:10%
- ローン条件:金利4.5%、返済期間30年、フルローン
さてこの物件、あなたなら買うでしょうか。
こう言うからには買うべき物件ではないんですが。笑
この物件の収支を計算すると、収入から費用を差し引いた純収益は月額88万円ほどになります。
一方、ローンお返済額は月額91万円ほど。
見事に逆ザヤです。
でもおそらく、仲介業者さんが作成する収支表では、毎月プラス20万円ほどになっているでしょう。
その差がどこからくるのかというと、空室率を見ているかどうかと、変動費を見ているかどうか、です。
仲介業者さんの出してくる収支表は、満室前提となっていて、修繕費や募集経費といった変動費が見込まれていない場合がほとんどです。
ただし、収支をしっかりみるとなんでもかんでも赤字になるわけではありません。
では、なぜこの物件は逆ザヤになってしまうのか。
それは家賃水準が低いからです。
15坪で5万円というと、坪当たりの家賃は3,333円です。
これが東京の都心だと、坪当たり1万円代、高いところでは2万円近くになります。
つまり、この物件は、家の広さに対する家賃の水準がかなり低いんですね。
そうすると、家賃水準に関係のない費用の負担が重くなります。
家賃水準に関係のない費用とは、建物管理費、修繕費などです。
これらの費用は、家賃の安いマンションだからといって、その分そのまま安くなるわけではありません。
もちろん建物のグレードによって費用が異なる場合もありますが、建物の物理的な面にかかる費用ですので、家賃がいくらだろうと、一定額はかかる費用です。
つまり、家賃水準が低いと、これらの費用の負担が相対的により重くなるというわけです。
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ちなみに上の例では、表面利回り10%に対して、実質利回りは5.9%になっています。
空室率は10%、各種費用を計上した結果として経費率は35%でした。
もし鑑定評価をするなら、還元利回りは7〜8%くらいになるのではないかと思います。
つまりその分、割高だということです。
「表面利回り10%」
という物件がなんでもかんでも買っていいとは限らないことがおわかりいただけましたでしょうか。
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