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J-REITの物件取得ニュースを裏読みすると・・・

J-REITの物件取得ニュースを裏読みすると・・・

今日はファンド業界のちょっとした事件的なニュースについて取り上げます。
 
J−REITの大和証券オフィス投資法人が物件を取得したというニュース。

ニュースリリースはこちら
http://www.daiwa-office.co.jp/site/file/tmp-rAASD.pdf

以下、日経不動産マーケット情報の2015年9月8日の記事の冒頭です。
 
「大和証券オフィス投資法人は9月8日、
 JR八丁堀駅近くにあるオフィスビル、
 KSKビル本館とKSKビル西館を取得する契約を結んだ。
 9月11日に引き渡しを受ける。
 価格は合計45億1800万円。
 売り主はヒューリックだ。」

好調なリートがまた物件を買った、
っていうさほど珍しくもない日常的なニュース、
ではないんですよねこれ。

私もファンドを運用していますが、
社内ではちょっとした事件になってました。
 
まず、ここまでの記事で、
おやっと思うのが、
売主がヒューリックだということ。
 
ヒューリックは賃貸業がメインの上場不動産会社です。
 
いまマーケットで一番強い価格をつけられるのが、
資金が豊富なこうした事業会社です。
 
ファンドのように投資家に配当利回りを約束する必要もないので、
銀行から融資が出る限りは、多少高くても物件を買えばインカムが入ってくるわけです。
 
そんなわけでヒューリックといえば
高値で物件を爆買いしているプレーヤー
っていうイメージ。
 
一方でリートは投資家に安定した配当を出さなければいけません。
 
なので自ずと物件の利回り目線が決まってきます。
 
つまり一定以上の価格では買えないはずなんですね。
 
ところがですよ。
そのリートがヒューリックから物件を買った。
しかもヒューリックも今年の4月に取得したばかりの物件です。
 
スポンサーからの物件供給ということじゃなく、
純粋に市場取引として買ったわけです。
 
普通に考えたら、あり得ない取引です。
 
そこで取得時の利回りに関する情報を見てみました。
 
ちょっと目を疑いましたね。
 
2物件あるんですが、
取得時のNOI利回りが
 
3.7%と3.9%

これは八丁堀の小規模なオフィスとしては異常に低い水準です。

ところが、中期的な想定NOI利回りが

4.4%と4.5%
 
となっています。
 
どういうことかというと、将来的には利回りがアップすることを前提に買っているわけです。
 
つまり、将来的に賃料が2割程度上昇することを見込んでいるということです。
 
逆に言えば、そういう想定をしなければ買えないほど、
物件価格が高騰しているということです。
 
確かに向う3年程度はビル供給が限定的である一方、
好調な経済に支えられて需要は旺盛なことが見込まれています。
 
また、その引き締まった需給を反映して、
都内のオフィスの賃料が2割程度上昇することを
予測するシンクタンクも複数あります。
 
とはいえです。
 
その上昇予測を全部織り込んで今の価格を決めてしまってるわけですよ。
 
なぜこういうことが起きるのかというと、
お金の集まっているファンドは
物件を買わなくてはいけないという事情があります。
 
お金があるのに物件を買わないでいると、
配当利回りが低下してしまうからです。
 
大和証券オフィス投資法人は上半期に増資していました。
 
おそらくその後、よほど物件が買えない状態が続いたのだと考えられます。
 
そうなると無理をしてでも物件を買いたいという圧力がどんどん高まります。
 
それで今回のような買い方に至ったのではないかと。
 
もっとも、全体の資産規模に比べれば1%程度の物件なので、
ファンド全体の利回りに与える影響はそれほど大きくはありません。
 
とはいえ、利回りを重視するリートが
こういう買い方をしないと買えないほど市場は加熱している
ということがうかがえる取引だったというわけです。

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